学校法人 南山学園 南山高等学校・中学校女子部Nanzan Girls’ Junior & Senior High School

News & Topics

朝のこころ(2021年4月26日)

2021.04.27

4月26日、赤尾神父様による「朝のこころ」です。

2021年4月26日 朝のこころ「『チリガミさま』と『チリガミさま』」

 しばらく前に掃除の監督をしていたときのことです。ある生徒から「先生も『チリガミさま』ですね」と言われ、私の頭の中には大きなクエスチョンマークが浮かびました。戸惑いながらもよく話を聞くと、その日もそうだったのですが、どうやら掃除の時間に私がいつもちりとりを持ってみんなが集めてくれたゴミを取っていたことから、ゴミ・ちり担当の私のことを『ちり神さま』と呼んだようでした。

 そしてもう一つ、「先生『も』チリガミさまだ」の「も」ですが、そもそも「チリガミさま」というのは、社会科の地理の先生の呼び名だということでした。社会の「地理の神さま」とゴミの「ちりの神さま」ではだいぶ格差があるなあと思いましたが、私の働きぶりが認められ、地理に精通し、情熱を持って教えておられる先生と並び称せられたということで、この称号を褒め言葉としてありがたく受け取りました。

 社会の「地理」とゴミの「ちり」もそうですが、日本語には同じ音で異なる意味の同音異義語がたくさんあり、短い会話や文章では混乱して話が通じないことがあります。同音異義語どころか、まったく同じ言葉であっても人によって、状況によって受け取り方が異なり、誤解を与えることがあります。たとえば「チリガミさま」という言葉だけを聞いて、それをどう感じるかも人それぞれでしょう。

 残念ですが、私たちはお互いの気持ちそのもの、心そのものを見ることはできません。言葉でさえ完全に気持ちを伝える役割を果たすことはできません。だからこそ、言葉を尽くして自分の心をできるかぎり伝える努力をします。精一杯に耳を傾けて、目の前にいる相手が何を伝えようとしているのかを聞き取ろうとします。言葉にならない表情や仕種にまで目を向けて、どんな思いを抱いているのかを何とか読み取ろうとします。

 言葉を大切にすることは、人を大切にすることです。あなたが目の前にいる相手を大切にしたいと思うなら、発する言葉も大切にしてください。それでももし誰かを傷つけてしまうことがあったとしたら、素直に謝る言葉を伝える勇気を持つことができますように。

DSC04075 (2).jpg