学校法人 南山学園 南山高等学校・中学校女子部Nanzan Girls’ Junior & Senior High School

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朝のこころ(2021年1月19日)

2021.01.20News

2021年1月19日、赤尾神父様による「朝のこころ」です。

【2021年1月19日 朝のこころ】「たとえ世界を変えることができなくても」

 去る1月2日、存命中の世界最高齢に認定されている福岡在住の田中力子(かね)さんが118歳の誕生日を迎えました。彼女が生まれた1903年は、ライト兄弟が人類初の有人動力飛行に成功した年であり、金子みすゞや小林多喜二が生まれた年だそうです。

 私が子どもの頃のご長寿さんと言えば、鹿児島県は奄美群島の徳之島出身である泉重千代さんという方でした。120歳まで生きたと言われていましたが、戸籍が整う前の生まれだったので実年齢は違っていたという説もあります。とはいえ、少なくとも105歳までは生きたとされており、非常に長生きした人でした。当時彼が世界最高齢とされていたときの逸話です。インタビューを受けて長寿の秘訣などについて話していましたが、好きな女性のタイプを聞かれると、「私は甘えん坊なので、やっぱり年上の女性かのう」と答えたそうです。自分が世界で一番年をとっていて世の女性はみんな年下だというのを逆手に取ったジョークで、このようなユーモアを言える心の余裕こそが重千代さんの長生きの秘訣ではなかったか、と思わせてくれます。

 ユーモアにはひねりがあります。先入観や思い込みとギャップがあるほど大きな笑いを生みますが、同時に当たり前の価値観をひっくり返して見せる強さがあります。私たちは世界のあり方をいきなり覆すことはできませんが、自分の見方や考え方を逆転させることはいつでもできます。自分の失敗を笑い話に変え、苦しみを将来の成功の糧に、諦めを希望に、自身の悲しみを他の人の痛みに共感する心に変えることができます。行く先が閉ざされたと思っても、視点をずらせば他にいくらでも道を見つけることができます。

冒頭で紹介した田中力子さんは、最高齢のギネス記録に公式認定された際、これまでで一番楽しかったことは?と尋ねられて、「今」と答えたそうです。つらいこと、苦しいこともいろいろあったけれど振り返ってみれば良かったと思えるように、逆境を乗り越えるしなやかなユーモアのセンスを持って、毎日の歩みを続けたいものです。

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