学校法人 南山学園 南山高等学校・中学校女子部Nanzan Girls’ Junior & Senior High School

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朝のこころ(2020年9月8日)

2020.09.11

9月8日、赤尾神父様による「朝のこころ」です。

2020年9月8日 朝のこころ 「かけがえのないわたしとあなたについて」

三年ほど前にインターネット上で話題になったらしい短歌を、しばらく前に遅ればせながら知りました。宇野なずきさんという方の短歌で、次のようなものです。

「誰ひとりきみの代わりはいないけど上位互換が出回っている」

作者の実際の意図はわかりませんが、厳しい現実を突きつける、非常に辛らつな言葉です。文字通りの意味では「あなたと全く同じ人間はいないけれども、あなたより優れた人はたくさんいる」ということですが、もしかしたら、皆さんも同じようなことを感じて落ち込んだり、「自分なんかいなくったって・・・」と腐ったりしてしまうことがあるかもしれません。残念ながらどんな分野でも自分より有能な人がどこかにいる、というのはほとんどの場合、事実です。今の自分がいるポジションや役割に代わりについたらもっとうまくやれる、もっといい結果を出せる、そんな人たちがたくさんいます。たとえ自分が自身の過去最高をたたき出しても、上を見れば切りがありません。

もし、人の価値や人生の意味が、獲得した能力や知識や成し遂げた業績、結果の評価だけであったとしたら、世界中のほとんどの人は落ち込まなければならないでしょう。けれども、実際はそうではありません。確かに、私たちは自分の成長のために努力するのをおろそかにすることはできません。それは社会の中で生きていくために必要なことですが、その結果については成績の優劣、スキルの優劣であって、人としての優劣ではありません。私たちの学校の理念である「人間の尊厳のために」という言葉で表される「一人ひとりのかけがえのなさ」は、「役割上のかけがえのなさ」や「能力や容姿や成績などのかけがえのなさ」、「役に立つか立たないか」について語られたものではなく、「存在のかけがえのなさ」についての言葉です。「今ここにいてくれる大切さ」についての言葉です。思うように結果が出なくても、他の人と同じことができなくても、人としての自分自身の価値は変わりません。何かができてもできなくても、皆さんはこの学校の大切な生徒であり、皆さんの家族にとってはかわいい娘であり、姉妹であり、孫であり、誰かにとってのかけがえのない友人です。

そしてたとえば、新型コロナウイルスに感染したとしても、それは私たちの尊厳を傷つけるものではありません。人としての価値を変えるものではありません。症状がおさまり、治るまで隔離された生活を送らなければならないでしょうが、だからといってその人が悪いことをしたというのでは決してありませんし、心ない言葉をかけられ、差別されるいわれもありません。

まだまだコロナ禍にありながら、私たちは新入生を迎えて部活動を再開し、生徒会行事の準備などにも励んでいます。その中でお互いを尊重し、できないことはできないなりに補い合い、助け合って毎日の学校生活をより良いものにしていきましょう。

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