学校法人 南山学園 南山高等学校・中学校女子部Nanzan Girls’ Junior & Senior High School

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朝のこころ(2020年6月23日)

2020.06.25News

今週は、今年度から赴任された赤尾神父様による「朝のこころ」です。

2020年6月23日 朝のこころ 「孤独と成長」

新型コロナウイルスの流行が収束に向かうにつれて、娯楽も含めて社会の動きが少しずつ以前のあり方に戻っていますが、先週プロ野球も開幕しました。野球といえば、皆さんはイチローさんのことをご存じでしょうか。愛知県出身のイチロー選手は、日本のプロ野球で9年間プレーした後、野球の本場であるアメリカに渡り、メジャーリーグで18年間も活躍し、多くの偉大な記録を残して惜しまれながら昨年の春に引退しました。

その引退試合の会見の中で、「孤独感をずっと感じてプレーしていましたか」という記者の質問に対する、次のような彼の答えが印象的でした。「現在それ(=孤独感)は全くないです。それとは違うかも知れないんですけど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て、外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから、このことは、外国人になったことで人の心をおもんぱかったり、痛みが分かったり、今までなかった自分が現れたんですよね。体験しないと、自分の中からは生まれないので、孤独を感じて苦しんだことは多々ありました。その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだよと今は思います。だから、つらいことしんどいことから逃げ出したいと思うことは当然だと思うんですけど、元気な時、エネルギーのある時にそれに向かっていくのは大事なことだと思います」。

おそらく記者がこの質問をしたのは、超一流の選手として野球をする上で常人には理解されないことが多かったのではないかという、イチロー選手の天才ぶりを強調する意図からだったと思いますが、彼は異なる視点から答えています。イチローほどのすごいプレーヤーでも、外国人としてアメリカで生活をして確かにある種の孤独感を感じていたけれども、でもその痛みやつらさを伴う自分の体験を通して他の人の痛みを理解し、分かち合うことができるようになったと、そしてそれは自分の未来にとって大事なこと、よいことだと語っています。

苦しいこと、つらいことは誰しも避けたいものです。けれども、それがどうしても避けられないとき、その経験を未来に向かってどう生かすかは、私たちの気持ち次第です。今年様々な経験をした私たちは、それを生かして今後の糧とし、特に人の痛みに共感できる人となり、人間の尊厳を心から理解し大切にするきっかけにすることができます。私たちの未来はどんなときでも、どんな状況に合っても希望に開かれている、ということを心に留めて毎日の学校生活を送っていきましょう。